伝搬遅延計算機
信号がケーブルや空間を伝わって目的地に届くまでの時間を計算します。
伝搬遅延(Propagation Delay)の基礎知識
現代の高速通信や電子回路において、「信号が伝わる速さ」は無視できない要素です。電気信号や光信号は「一瞬」で届くように思えますが、実際には有限の時間を必要とします。この到達にかかる時間を伝搬遅延(Propagation Delay)と呼びます。
1. 信号の速度は光速よりも遅い
真空中であれば、電波や光は光速(\(c \approx 3.0 \times 10^8 \, m/s\))で進みます。しかし、ケーブルや基板(PCB)の中では、絶縁体の影響を受けて速度が低下します。
この速度の低下率を表すのが速度計数(Velocity Factor: VF)です。
- 同軸ケーブル: VF ≈ 0.66 (光速の約66%)
- 光ファイバー: VF ≈ 0.67 (コアの屈折率による)
- FR-4基板: VF ≈ 0.5 (光速の半分程度まで落ちる)
2. 伝搬遅延の計算式
距離 \(L\) を信号が進むのにかかる時間 \(t_{pd}\) は以下の式で求められます。
例えば、1メートルの同軸ケーブル(VF=0.66)を通る信号の遅延は:
t = 1 / (3e8 * 0.66) ≈ 5.05 × 10^-9 秒 = 5.05 ナノ秒
「1メートルあたり約5ナノ秒」と覚えておくと、現場での概算に役立ちます。
3. なぜ遅延計算が重要なのか?
(1) デジタル回路のタイミング設計
GHz帯で動作するCPUやメモリでは、1クロックの時間は1ナノ秒以下になります。基板上の配線が数センチ違うだけで信号の到達タイミングがずれ、セットアップ/ホールドタイム違反となり誤動作の原因になります。これを防ぐために「等長配線」が行われます。
(2) ネットワークレイテンシ
東京-大阪間(直線約400km)を光ファイバーで結ぶと、往復で約4msの物理的な遅延が発生します。これはルーターの処理遅延などを除いた、どうしても縮められない物理的限界です。HFT(高頻度取引)などの金融分野では、この数ミリ秒を短縮するために最短ルートの敷設が競われています。
まとめ
電気は速いですが、瞬間移動ではありません。距離が長くなるほど、あるいは周波数が高くなるほど、伝搬遅延の影響は大きくなります。この計算機を活用して、物理層での遅延を見積もってみてください。