3事象の確率計算機
事象A、B、Cおよびその共通部分の確率を入力してください。
3事象の確率と包除原理:複雑な重なりを解き明かす
確率論において、コイン投げやサイコロのような単純な事象(1つまたは2つ)を扱うのは比較的簡単です。しかし、現実世界の問題はもっと複雑で、3つ以上の事象が絡み合い、互いに影響し合っていること(共通部分を持つこと)がよくあります。
例えば、「数学が得意な人(A)」、「英語が得意な人(B)」、「物理が得意な人(C)」という3つのグループがあるとき、「少なくとも1科目が得意な人は全体の何%か?」を知りたいとします。単純にそれぞれの割合を足すだけでは、複数の科目が得意な人を「二重、三重にカウント」してしまうため、正しい答えは出ません。
このページでは、3つの事象が重なり合う複雑な確率計算を正しく行うための強力なツール「包除原理(Inclusion-Exclusion Principle)」について、ベン図を使いながら直感的に理解できるように解説します。
1. 和集合の確率 \( P(A \cup B \cup C) \) とは?
記号の確認から始めましょう。
- \( \cup \) (カップ / Union): 「または」。和集合を表します。\( A \cup B \cup C \) は「A, B, C のうち少なくとも1つが起こる」ことを意味します。
- \( \cap \) (キャップ / Intersection): 「かつ」。共通部分(積事象)を表します。\( A \cap B \) は「AとBが同時に起こる」ことを意味します。
2. 包除原理の公式と意味
3つの事象の和集合の確率は、以下の公式で求められます。これが包除原理です。
\( P(A) + P(B) + P(C) \) …①
\( - \{ P(A \cap B) + P(B \cap C) + P(C \cap A) \} \) …②
\( + P(A \cap B \cap C) \) …③
この公式が何をしているのか、ステップごとに見ていきましょう。
ステップ①:とにかく全部足す(含める / Include)
まず、3つの円の面積(確率)を単純に足します。\( P(A) + P(B) + P(C) \)
しかしこれでは、重なっている部分を重複して数えてしまっています。
・2つ重なっている葉っぱのような部分(\( A \cap B \) など)は2回数えています。
・真ん中の3つ重なっている部分(\( A \cap B \cap C \))は3回も数えてしまっています。
ステップ②:重なりを引く(除く / Exclude)
重複を解消するために、重なっている部分を引きます。\( - \{ P(A \cap B) + P(B \cap C) + P(C \cap A) \} \)
これで2回数えていた部分は正しく1回になりました。
しかし問題が発生しました。真ん中の「3つ重なっている部分」です。
もともと3回足されていましたが、ここで3回引かれてしまいました(\( A \cap B \) にも、\( B \cap C \) にも、\( C \cap A \) にも含まれているため)。
つまり、真ん中の部分が空っぽ(0回)になってしまったのです。
ステップ③:足し戻す(再び含める / Include)
消えてしまった真ん中の部分を、最後に1回だけ足し戻します。\( + P(A \cap B \cap C) \)
これで全ての領域が、過不足なくきっかり1回ずつカウントされたことになります。
3. 実用例:マーケティング分析
あるECサイトで、以下のキャンペーンを行いました。
A: メルマガ配信(クリック率 10%)
B: アプリ通知(クリック率 15%)
C: SNS広告(クリック率 5%)
これらを同時に実施したとき、「少なくとも1つの経路からサイトに来てくれる確率」は単純な足し算(10+15+5=30%)ではありません。同じ人が複数の経路で見る可能性があるからです。この計算機を使えば、重複を考慮した正しいリーチ率(到達率)を計算できます。
4. 独立事象の場合の計算
もし事象A, B, Cが互いに独立である(互いに影響を与えない)場合、共通部分の確率は単純な掛け算になります。
- \( P(A \cap B) = P(A) \times P(B) \)
- \( P(A \cap B \cap C) = P(A) \times P(B) \times P(C) \)
例えば、サイコロを3回振って「1回目は偶数(A)、2回目は3以上(B)、3回目は1が出る(C)」といったケースです。この場合は共通部分の入力を省略し、自分で掛け算して求めることができます。
5. 余事象の活用
「少なくとも1つが起こる確率」を求めるもう一つの方法は、「余事象(何も起こらない確率)」を全体から引くことです。
\( P(A \cup B \cup C) = 1 - P(\bar{A} \cap \bar{B} \cap \bar{C}) \)
独立事象の場合は、\( 1 - \{ (1-P(A)) \times (1-P(B)) \times (1-P(C)) \} \) と計算する方が、包除原理を使うよりもずっと計算が楽になります。この計算機の結果欄に表示される「何も起こらない確率」は、この余事象に相当します。