Padua予測スコア計算機
内科入院患者の静脈血栓塞栓症(VTE)リスクをエビデンスに基づき数値化
Padua予測スコアとは
Padua(パドヴァ)予測スコアは、内科疾患で入院している患者における静脈血栓塞栓症(VTE: Venous Thromboembolism)の発症リスクを評価するために開発された、臨床的なリスク算定ツールです。
静脈血栓塞栓症には、足などの深い静脈に血のかたまりができる「深部静脈血栓症(DVT)」と、その血栓が血流に乗って肺の血管に詰まる「肺血栓塞栓症(PTE)」が含まれます。これらは入院患者において、予防可能でありながら予防されなければ死に至ることもある重大な合併症です。
判定のカットオフと臨床的意義
スコアの合計値により、以下のようにリスクレベルが分類されます。
- 低リスク(合計スコア 3点以下): VTEの発症率は約0.3%と低く、一般的には薬物的な予防療法は不要とされます。
- 高リスク(合計スコア 4点以上): VTEの発症率は予防を行わない場合 約11%に上ると報告されています。ヘパリン類などの抗凝固療法による予防が強く推奨されます。
主要なリスク因子の背景
Paduaスコアは、Virchow(ウィルヒョー)の3要素(血流の停滞、血管内皮の損傷、血液成分の変化)に基づいて構成されています。
1. 活動性の悪性腫瘍(+3点)
癌細胞は血液を固まりやすくする物質(組織因子など)を放出するため、癌の入院患者は常に高いリスクにさらされています。特に転移がある場合や最新の化学療法を受けている場合にスコアが加算されます。
2. 活動性の低下(+3点)
入院に伴い3日以上の臥床(ベッド上での安静)を余儀なくされると、下肢の筋肉ポンプが働かず、血流が停滞します。これは血栓形成の最大の誘因の一つです。
3. 既知の血栓性素因(+3点)
プロテインC欠乏症や抗リン脂質抗体症候群など、遺伝的あるいは獲得的な血液の固まりやすさを持っている場合です。
日本人のBMIとPaduaスコア
オリジナルのPaduaスコアでは肥満を「BMI 30以上」と定義していますが、日本人は欧米人に比べて低いBMIでも代謝異常や血管疾患のリスクが高まる傾向があります。 日本国内のガイドラインでは、BMI 30以上だけでなく「体格」全般を考慮したきめ細かなリスク評価が求められる場合もありますが、Paduaスコアを標準的に用いる際は30が基準となります。
静脈血栓塞栓症を「防ぐ」ために
高リスクと判定された場合、医療チームは以下のような予防対策( Thromboprophylaxis )を検討します。
- 薬物的予防: 低用量の未分画ヘパリン、エノキサパリンなどの低分子ヘパリン、またはDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)の使用。
- 物理的予防: 弾性ストッキングの着用や、間欠的空気圧迫法(フットポンプ)の導入。
- 早期離床: 可能であれば早期にベッドから離れ、歩行を開始することが最も自然で強力な予防策です。
まとめ:数値化が支える医療安全
「なんとなく危なそう」という主観的な判断ではなく、Paduaスコアのような客観的なツールを用いて「4点以上」という明確な基準を設けることで、見落としのない安全な医療が実現します。
本計算機が、病棟でのリスク管理の効率化、あるいは患者さんやご家族の病態理解の一助となれば幸いです。
※免責事項:本ツールは医療専門家への情報提供および学習支援を目的としたものであり、個別の診断や治療方針の立案に使用するものではありません。実際の治療にあたっては、必ず主治医の判断に従ってください。