NIH脳卒中スケール(NIHSS)計算機

NIH Stroke Scale: 世界標準の神経学的重症度評価ツール

1a. 意識レベル (LOC)

患者の反応性を評価します。

1b. 意識レベル 質問

現在の月と年齢を尋ねます。

1c. 意識レベル 指示

目を開閉する、手を握る・開くよう指示します。

2. 最良注視 (Gaze)

眼球の水平方向の動きを評価します。

3. 視野 (Visual Fields)

対光反射、脅迫反射などで評価します。

4. 顔面麻痺 (Facial Palsy)

歯を見せる、目を強く閉じるなどの動作。

5. 上肢の運動 (Motor Arm)

掌を下にして挙上維持 (坐位90度/臥位45度、10秒間)。

6. 下肢の運動 (Motor Leg)

臥位で30度挙上維持 (5秒間)。

7. 肢体失調 (Limb Ataxia)

指鼻試験、踵膝試験で評価します。

8. 感覚 (Sensory)

針刺刺激に対する反応。

9. 最良言語 (Language)

絵の説明、物品の命名、文章の読唱。

10. 構音障害 (Dysarthria)

単語を正確に発音できるか。

11. 消去現象/注意障害 (Neglect)

視覚・触覚などの同時刺激に対する無反応。

TOTAL NIHSS SCORE
0
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NIHSSとは:脳卒中診療を数値で定義する世界標準

NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale:NIH脳卒中尺度)は、脳梗塞(虚血性脳卒中)の重症度を定量的かつ迅速に評価するために、アメリカ国立衛生研究所(NIH)によって開発された神経学的評価指標です。 11の評価領域(計15項目)を「0点(正常)」から加点方式で採点し、最高42点で評価します。 今日、NIHSSは単なる診断ツールを超え、t-PA(血栓溶解療法)の適応判断や血管内治療(機械的血栓回収術)の決定、さらには入院後の経過観察や予後予測において、世界中の救急・脳卒中センターで欠かせない共通言語となっています。

評価項目の詳細:なぜ11領域が必要なのか

NIHSSは、脳の特定の領域(皮質、深部、脳幹、小脳など)の損傷を網羅するように設計されています。

  • 意識・言語(LOC・Language): 脳幹網様体や皮質広範囲の障害、優位半球(通常は左)の損傷を反映します。
  • 運動・感覚(Motor・Sensory): 内包や皮質運動野・感覚野の系統網羅的な評価。左右差(Lateralization)を明確にします。
  • 眼球運動・視野(Gaze・Visual): 後頭葉や視床、脳幹部(MLF等)の細かな損傷を捉えます。
  • 高次脳機能(Inattention): 劣位半球(通常は右)の損傷によって生じる「半側空間無視(Neglect)」を検出します。

重症度分類と臨床的な意味

スコア範囲 重要度分類 臨床的な解釈
0 症状なし 神経学的欠損なし
1 - 4 軽症 日常生活への影響は限定的だが、t-PA適応を慎重に検討
5 - 15 中等症 本業の麻痺や失語を伴う。急性期治療の強力な適応
16 - 20 中等~重症 大きな血管の閉塞(LVO)を疑う。血管内治療を強く検討
21 - 42 重症 広範囲梗塞の恐れ。予後は厳しく、積極的な生命維持が必要

急性期加療の鍵:t-PAと血栓回収術の基準

脳卒中治療のゴールデンルールは「Time is Brain(時間は脳)」です。 発症から4.5時間以内に使用されるt-PA(アルテプラーゼ)の適応において、NIHSSスコアは極めて重要です。 一般に「NIHSS 4点以上」が積極的な適応とされますが、4点未満であっても「就労不可となるほどの致命的な少症状(失語や視野障害など)」がある場合は使用が推奨されます。 また、NIHSSが極端に高い(例えば25点以上)場合、再開通後の脳出血リスクが高まるため、治療のメリットとリスクの慎重なバランスが求められます。 近年のエビデンスでは、NIHSS 6点以上の主幹動脈閉塞に対し、発症24時間以内であれば血栓回収術が劇的な効果を示すことが証明されています。

評価における「最初の印象(ファースト・スコア)」

NIHSSを評価する際の鉄則は「患者が最初に見せた反応を記録すること」です。 「もう一度やってみて」と何度も練習させることは、正確な現状把握を妨げます。 また、昏迷状態の患者においては、運動機能の評価が困難な場合がありますが、その際は痛覚刺激に対する回避反応を元に(一定のルールに従って)加点を行います。 評価者によるバラツキを抑えるため、医療従事者は定期的なトレーニングと認定(NIHSS Certification)を受けることが一般的です。

まとめ:スコア推移とリハビリテーションへの架け橋

入院時のNIHSSだけでなく、24時間後、あるいは1週間後のスコア推移(Delta NIHSS)は、治療の成功と長期的な機能回復(mRSスコア)を予告します。 急性期を脱した後、NIHSSが低い状態で安定していることは、集中的なリハビリテーションによって社会復帰できる可能性が高いことを意味します。 この精密計算機が、臨床現場、教育、そして患者家族への正確な説明の一助となることを願っています。