対数平均温度差(LMTD)計算機
熱交換器の両端の温度から、有効な駆動力となる平均温度差を導き出します。
対数平均温度差(LMTD)とは?:熱移動の「真の推進力」
熱交換器の設計において、どれだけの熱量が移動するかを計算するためには、高温流体と低温流体の「温度差」を知る必要があります。しかし、流体が熱交換器を通過するにつれて、高温流体は冷やされ、低温流体は温められるため、温度差は場所によって常に変化し続けます。
この場所ごとに異なる温度差を、伝熱計算でそのまま使える「一つの代表値」として数学的に定義したものが**対数平均温度差(LMTD: Logarithmic Mean Temperature Difference)**です。
なぜ単なる「平均(AMTD)」ではいけないのか?
入口の温度差と出口の温度差を足して2で割ったものを算術平均温度差(AMTD)と呼びます。温度変化が小さい場合はこれで代用できますが、温度変化が大きい場合、AMTDは実際の有効な温度差よりも常に大きく算出されてしまいます。この「過大評価」を避けるために、対数を用いたより厳密な平均が必要となるのです。
向流と並流:効率を左右する流動方向
LMTDの値は、2つの流体が流れる方向に大きく依存します。
向流 (Counter-flow)
高温流体と低温流体が逆方向から流れる方式です。熱交換器の全域にわたって温度差を一定に保ちやすく、LMTDが並流よりも大きくなります。つまり、同じサイズの熱交換器でも、より多くの熱を移動させることができる「最も効率的な方式」です。また、高温流体の出口温度を低温流体の出口温度より低くすることも可能です。
並流 (Parallel-flow)
両方の流体が同じ入り口から流れる方式です。入り口での温度差が非常に大きく、出口に向かって急激に収束します。LMTDは小さくなり、温度変化に限界があるため、特殊なプロセス(急冷が必要な場合など)を除いては向流に劣ります。
LMTDの計算公式
LMTD = (ΔT₁ - ΔT₂) / ln(ΔT₁ / ΔT₂)
ここで、ΔT₁ と ΔT₂ は熱交換器の両端における温度差を指します。
- 向流の場合: ΔT₁ = Th_in - Tc_out , ΔT₂ = Th_out - Tc_in
- 並流の場合: ΔT₁ = Th_in - Tc_in , ΔT₂ = Th_out - Tc_out
設計上の留意点:汚れ係数とF因子
実際のプラント設計では、算出したLMTDをそのまま使うことは稀です。
- 汚れ係数 (Fouling Factor): 時間が経つと管壁に汚れ(スケール)が付着し、伝熱が悪化します。これを見越して設計に余裕を持たせます。
- 補正係数 (F): 多管式(シェル&チューブ)熱交換器のように、流れが完全にまっすぐな向流になっていない場合は、LMTDに1以下の係数Fを掛けて補正します。
まとめ
LMTDは、熱力学の理論を実務的な設計へと橋渡しする重要な数値です。本計算機で向流と並流を切り替え、グラフで温度プロファイルを比較してみてください。エンジニアリングの基本である「向流の優良性」を視覚的に理解できるはずです。
よくある質問 (FAQ)
Q:ΔT1 = ΔT2 になってしまった場合は?
A:公式上は分母がゼロになり、計算不能となります。しかし、その極限値は LMTD = ΔT1 = ΔT2 となります。本計算機ではこの特殊なケースも自動で処理します。
Q:相変化(蒸発・凝縮)がある場合は?
A:相変化中は温度が一定になるため、温度プロファイルが折れ線状になります。その場合は、相変化領域と顕熱領域(温度が変わる領域)に分けて個別にLMTDを計算する必要があります。