Lilleスコア (Lille Model)

重症アルコール性肝炎におけるコルチコステロイド治療の反応性を予測します。

基本情報・治療前データ (Day 0)
mg/dL
g/dL
対照値と比較した「延長秒数」を入力
なし
あり
治療開始7日目 (Day 7)
mg/dL
ステロイド治療開始から7日目が推奨されます
【重要】本ツールは重症アルコール性肝炎患者のステロイド治療反応性を評価するためのものです。結果の解釈には高度な専門的判断が必要です。治療の継続・中止は、MELDスコア、合併症の状態、患者の全身状態を総合的に考慮し、主治医が決定してください。

Lilleスコアとは?:アルコール性肝炎治療の道標

**Lilleスコア(Lille Model)**は、重症アルコール性肝炎(Severe Alcoholic Hepatitis: SAH)患者に対し、コルチコステロイド投与を開始した後の「治療反応性」を科学的に評価するための指標です。フランスのLille大学の研究グループによって開発され、世界中の消化器内科で標準的に使用されています。

重症アルコール性肝炎は非常に予後の悪い疾患であり、ステロイドの投与は救命の鍵となりますが、一方で**「ステロイドが効かない患者(Non-responders)」**に対して投与を続けることは、重篤な感染症のリスクを高めるだけでメリットがありません。Lilleスコアは、治療開始7日目にして、治療を継続すべきか、あるいは中止して肝移植などの次の選択肢を検討すべきかを判断する材料となります。

スコアリングの仕組みと計算式

Lilleスコアは、年齢、腎機能、アルブミン値、プロトロンビン時間、そして最も重要な**「治療開始から7日間のビリルビン値の変化」**を組み合わせて算出されます。

ロジスティック回帰式による複雑な計算を行いますが、最終的なスコアは**0から1の範囲**で示されます。

R = 3.148 - 0.101 × age + 0.147 × albumin + 0.0165 × bili0 - 0.206 × (renal failure) - 0.0065 × bili0 × bili7 - 0.0096 × PT

※本計算機はこの公式に基づき、最終的な確率を算出しています。

判定の極意:0.45という境界線

算出されたスコアが**0.45**を超えているかどうかが、臨床上の大きな分かれ目となります。

1. Lilleスコア < 0.45(良好な反応:Responders)

ステロイド治療が有効である可能性が高く、そのまま28日間のクールを完結させることが推奨されます。このグループの**6ヶ月生存率は約85%**と、比較的良好な予後が期待できます。

2. Lilleスコア ≥ 0.45(反応不良:Non-responders)

ステロイドを継続しても生存率の改善が見込めない、いわゆる「ステロイド抵抗性」の状態です。このグループの**6ヶ月生存率は約25%**まで低下します。 臨床ガイドラインでは、この時点でステロイドの中止を検討し、感染症対策に専念するか、早期の肝移植を検討することが提案されています。

臨床現場での応用と注意点

Lilleスコアを使用する際には、以下のポイントを理解しておく必要があります。

  • Maddrey DFスコアとの関係: まずDFスコア(またはMELD)で「重症」と判定され、ステロイドが開始された患者が対象です。
  • 7日目の重み: 7日目のビリルビン値が下がっていることは、肝臓の再生能力と炎症の鎮静化を示す強力な指標です。
  • 4日目での早期評価: 最近の研究では、治療4日目(Day 4)のLilleスコアでも高い精度で予測が可能であることが示唆されており、より迅速な判断が求められる過酷な症例では4日目評価も行われます。

まとめ

アルコール性肝炎の治療は、時間との戦いです。Lilleスコアは、感情や直感に頼らず「データに基づいた勇気ある撤退」または「確信を持った継続」を選択するための強力な武器です。本ツールを用い、適切なタイミングで最善の医療選択が行われることを願っています。

よくある質問 (FAQ)

Q:腎不全の定義は?

A:一般的には血清クレアチニン値が 1.5 mg/dL 以上、または急性腎障害(AKI)の診断基準を満たす場合を指します。本計算機では「あり」を選択してください。

Q:ビリルビン値が途中で上がってしまった場合は?

A:7日目の値が0日目より高い場合、Lilleスコアは必然的に悪化します。これは炎症が制御できていない、あるいは二次的な感染症や多臓器不全が進行しているサインです。