真性キャリア濃度計算機

選んだ半導体材料と周囲温度に基づき、熱により励起される自由電子と正孔の密度(ni)を算出します。

シリコン (Si)
ゲルマニウム (Ge)
GaAs
K
(ケルビン: 273.15 + ℃)
eV
励起キャリアのシミュレーション
真性キャリア濃度 (ni) @ 300K
9.65 × 109
cm⁻³

真性キャリア濃度 (Intrinsic Carrier Concentration) とは?

真性キャリア濃度 (ni) とは、不純物を一切含まない純粋な半導体材料(真性半導体)において、熱によって基底状態(価電子帯)から励起され、自由電荷として動けるようになった電子および正孔の濃度のことです。

絶対零度 (0K) では、半導体内の全ての電子は価電子帯にあり、電気を流しません。しかし、温度が上がるにつれて熱エネルギーが「バンドギャップ」という壁を超えさせ、自由電子とそのペアとなる正孔(穴)を生み出します。

計算公式:ni の理論

真性キャリア濃度は、統計力学に基づき以下の式で導かれます。

ni² = NC × NV × exp( -Eg / kT )
  • NC, NV: 伝導帯および価電子帯の状態密度。材料ごとの定数であり、Tの1.5乗に比例します。
  • Eg: バンドギャップエネルギー (Electron Volts)。材料が電気を流すために必要なエネルギーのハードル。
  • k: ボルツマン定数。
  • T: 絶対温度 (Kelvin)。

温度依存性の恐怖:指数関数的な変化

この計算式の最も重要な特徴は、「exp(指数関数)」の項が含まれていることです。これは、温度がわずかに上昇するだけで、キャリア濃度が劇的に(指数関数的に)増えることを意味します。

例えばシリコンの場合、室温 (300K) での ni は約 10¹⁰ cm⁻³ ですが、100℃程度まで上がるとその数は何百倍にも膨れ上がります。この性質は、精密な電子機器やパワーステーションが冷却を非常に重視する物理的な理由そのものです。キャリアが増えすぎると、半導体の制御ができなくなり(熱暴走現象)、デバイスが破壊されてしまいます。

各材料のバンドギャップ Eg

材料によって ni の値は大きく異なります。これはバンドギャップ (Eg) の広さが異なるためです。

  • ゲルマニウム (Ge): Eg ≒ 0.66 eV。バンドギャップが狭いため室温でも ni が大きく、熱に弱いという性質があります。
  • シリコン (Si): Eg ≒ 1.12 eV。熱安定性と製造コストのバランスが良く、現在の半導体市場の主役です。
  • ガリウムひ素 (GaAs): Eg ≒ 1.42 eV。シリコンよりも広く、高速動作と高温環境に強い特性があります。
  • 炭化ケイ素 (SiC) / 窒化ガリウム (GaN): これらは「ワイドバンドギャップ半導体」と呼ばれ、非常に大きな Eg を持つため、超高電圧・高温下での動作が可能です(次世代の電気自動車などで活用)。

半導体デバイス設計への応用

デバイスの設計において、ni は漏れ電流(ダークカレント)の基準値となります。理想的には、ドーピング(不純物添加)によるキャリア濃度が ni よりも十分に高くなくては、半導体としてのスイッチング機能を維持できません。そのため、ni が大きくなりすぎる「高温環境」は、半導体にとっての天敵と言えるのです。

よくある質問 (FAQ)

Q:計算結果の 10⁹ などの値はどれくらい多いのですか?

A:数字上は大きく見えますが、シリコンの原子密度は約 5×10²² cm⁻³ です。それと比較すると、真性キャリアは「数兆個の原子の中に数個しか自由電子がいない」という極めて希薄な存在です。だからこそ半導体(半分導体)と呼ばれます。

Q:式の中で温度が T³/² に依存しているのはなぜですか?

A:これは電子の状態密度がエネルギーの平方根に比例するという物理的性質に由来します。しかし、実務上は指数項 (exp) の変化が圧倒的に支配的です。

※計算上、状態密度の温度補正(T³/² 因子)を含めて算出しています。値は材料物性ハンドブック等の代表値を基準としています。