損傷重症度スコア (ISS) 計算機

解剖学的な6つの部位における損傷(AISスコア)から、客観的な全身外傷の重症度を算出します。

全身損傷重症度スコア (ISS)
0
損傷なし

※トップ3部位のAISスコアの2乗和です。

ISS (Injury Severity Score) とは?

損傷重症度スコア (ISS) は、多発外傷を負った患者の全身的な重症度を評価するために、1974年にベーカーらによって開発された解剖学的指標です。外傷診療において世界中で最も広く採用されている指標の一つであり、救急医療の現場や臨床研究、外傷レジストリ(統計)において標準的に用いられています。

ISSは、解剖学的に分類された身体の各部位ごとに、AIS(簡略外傷尺度)という0〜6段階のスコアを割り当て、それらを組み合わせることで算出されます。

ISS の計算方法:2乗和の論理

ISSの算出ステップは以下の通りです。

  1. 全身を以下の6つの部位に分けます。
    • ①頭部・頚部 (Head/Neck)
    • ②顔面 (Face)
    • ③胸部 (Chest)
    • ④腹部・骨盤内臓器 (Abdomen)
    • ⑤四肢・骨盤骨 (Extremities)
    • ⑥体表 (External)
  2. 各部位で最も重症な損傷のAISスコアを判定します。
  3. 全部位の中で最も高いAISスコア上位3つの2乗を合計します。
ISS = (AIS 1位)² + (AIS 2位)² + (AIS 3位)²

※例外:いずれかの部位で AIS = 6 (生存不能) と判定された場合、他の部位に関わらず ISS は自動的に 75(最高値) となります。

スコアの判定と意味

ISS の範囲は 0 から 75 です。一般的に以下のように解釈されます。

  • 1 〜 8 点: 軽症
  • 9 〜 15 点: 中等症
  • 16 〜 24 点: 重症
  • 25 点以上: 極めて重症(非常に高い死亡率)

特に ISS 16 点以上 は「メジャートラウマ(重大外傷)」と定義され、高次外傷センターでの集約的な治療が必要な目安とされています。ISSが高くなればなるほど、死亡率の上昇、入院期間の長期化、合併症の発現率との強い相関が見られます。

AISスコアの目安(簡略外傷尺度)

ISSの元となるAISスコアは、解剖学的な損傷の程度を表します。

AIS 評価 具体的な例(イメージ)
1 軽微 (Minor) 軽度の表皮剥離、打撲
2 中等度 (Moderate) 単純な長管骨骨折、脳震盪
3 重度・非致命的 (Serious) 大腿骨骨折、中程度の内臓損傷
4 重度・致命的の疑い (Severe) 多量の出血を伴う臓器破裂、重度脳損傷
5 極めて重度 (Critical) 脳幹損傷、高グレードの臓器損傷
6 生存不能 (Unsurvivable) 頭部崩壊、完全な脊髄離断

ISS の活用と限界

ISSは非常に強力なツールですが、臨床現場では以下のような特性と限界を理解しておく必要があります。

長所

  • 世界中でデータが蓄積されており、病院間の医療の質を比較するベンチマークに最適。
  • 解剖学的損傷に基づいているため、客観性が高い。

短所・限界

  • 同一部位の多発損傷を評価できない: 例えば、同じ胸部の中に複数の重症損傷があっても、上位1つしかカウントされません。この欠点を補うために NISS (New ISS) という指標も提案されています。
  • 年齢や既存疾患を考慮しない: 同じ点数でも、20歳と80歳では予後(生存の可能性)が大きく異なります。
  • 生理学的状態を無視している: 血圧や意識レベルといったリアルタイムの容態は、RTS (Revised Trauma Score) などの別の指標で評価する必要があります。

まとめ

ISSは、外傷患者が「全身でどれだけのダメージを受けているか」を数値化する最強の共通言語です。救急医、外科医、看護師がこのスコアを共有することで、治療の優先順位(トリアージ)を決定し、適切な医療資源の投入が可能になります。

よくある質問 (FAQ)

Q:ISSは搬送後すぐに出せますか?

A:厳密なISSを算出するには、CT検査や手術、場合によっては解剖による全ての診断が確定する必要があります。そのため、初期治療段階では暫定的なスコアが用いられます。

Q:点数が 75点 を超えることはありますか?

A:ありません。最高点は AIS 5 が3箇所(25+25+25=75)、あるいは AIS 6 が1箇所でもあれば 75 と固定されます。

※免責事項:本計算機は学習および情報提供を目的としており、実際の診断や治療方針の決定については必ず医師の判断を仰いでください。