インダクタ並列合成計算機
複数のコイルを並列に接続したときの全体のインダクタンスを計算します。磁気結合がない理想的な状態を想定しています。
インダクタの並列接続:基本のルール
電気回路の設計において、手元にあるインダクタの数値では足りないときや、電流の許容容量を増やしたいときに行われるのが並列接続です。インダクタを並列に繋いだ際の合成インダクタンスの計算方法は、実は「抵抗器の並列接続」と同じ数理モデルに基づいています。
「逆数の和の逆数」。これがキーワードです。
合成インダクタンスの公式:1/L = Σ(1/Li)
磁気的に互いに影響を与えない(相互インダクタンスが無視できる)場合、複数のインダクタ (L1, L2, L3...) を並列接続した際の合計値 (L_total) は以下の式で求められます。
1 / L_total = (1 / L1) + (1 / L2) + (1 / L3) + ...
特に2つのインダクタのみを接続する場合は、「和ぶんの積」として広く知られる簡略式を使うこともできます。
L_total = (L1 × L2) / (L1 + L2)
並列接続の特徴とメリット
- 合成値は常に最小のインダクタよりも小さくなる: 並列に繋げば繋ぐほど、全体のインダクタンスは減少します。これは電流の「逃げ道」が増えることで、変化に対する全体の抵抗(リアクタンス)が弱まるためです。
- 許容電流が増加する: 複数のコイルに電流が分散して流れるため、ひとつのコイルにかかる負担が減り、回路全体としてより大きな電流を扱えるようになります。
- 直流抵抗 (DCR) の低下: 巻線が並列になるため、回路全体の直流抵抗も下がり、発熱を抑えることができます。
重要な注意点:相互インダクタンス (M)
この計算機で算出される値は、それぞれのコイルが離れて配置されており、お互いの磁束が干渉しない「理想的な状態」を想定しています。
しかし、実際の基板上でコイル同士を非常に近くに配置したり、同じコアに巻いたりすると、相互インダクタンス (M) が発生します。この場合、接続の向き(極性)によって合計値は大きく変動し、単純な逆数和ではなくなります。設計の際は、磁力線が干渉しないようコイルの向きを90度変えて配置するなどの物理的な配慮が必要です。
活用シーン:なぜわざわざ並列にするのか?
通常、設計にぴったりの値の部品を購入するのがベストですが、以下のようなケースで並列接続が役立ちます。
1. 非標準的な値の作成
E系列(標準的なラインナップ)にない特殊なインダクタンス値が必要な場合、市販品を組み合わせて目的の数値を作り出します。
2. 電源回路(DC-DCコンバータ)の出力段
大電流を流す電源回路では、一つの巨大なコイルを使うよりも、小型のコイルを複数並列にして(多相化など)、電流を分担させることで部品の背丈を抑えたり、損失を分散させたりします。
よくある質問 (FAQ)
Q:インダクタンスを増やすにはどうすれば良いですか?
A:並列とは逆に、「直列 (Series)」に接続してください。直列なら単純な足し算(L1 + L2)になり、全体のインダクタンスを大きくすることができます。
Q:単位(mHやμH)が混ざっていても大丈夫ですか?
A:手計算の際は、必ず全ての単位を H (ヘンリー) に揃えてから計算してください。この計算機では、各行の単位選択メニューによって自動的に変換して処理します。