脳内出血量推定 (ABC/2法)

CT画像上の3軸の長さから血腫の体積を迅速に計算します。

血腫が最も大きく見えるスライスでの最大径
Aに垂直な方向の最大径
血腫が見えるスライス枚数 × スライス間隔(またはスライス厚)

計算結果

ABC/2法とは:脳出血量測定のゴールドスタンダード

ABC/2法は、非造影CT画像を用いて、脳出血(ICH)の血腫量を迅速かつ簡便に推定するための数学的公式です。1996年にKothariによって普及したこの手法は、血腫を楕円体(ラグビーボールのような形)と仮定し、「体積 = (4/3)π × (A/2) × (B/2) × (C/2)」という公式を「(A × B × C) / 2」に簡略化したものです(π ≒ 3と仮定)。

コンピュータによる自動3D volumetryが普及しつつある現在でも、救急外来や術中などの時間的猶予がない場面では、このABC/2法が重症度判定や手術適応の決定に極めて重要な役割を果たしています。

測定の手順とコツ

  • A(最大長径): 出血の広がりが最も大きいスライスを選び、その最大の長さを測定します。
  • B(最大短径): 同じスライス上で、Aに対して直交(90度)する方向の最大幅を測定します。
  • C(厚み): 血腫が含まれるスライス枚数を数えます。ただし、端のスライスで血腫が半分以下しか見えない場合は0.5枚、微小な場合はカウントしないなど調整が必要です。これにスライス厚(例:0.5cm)を掛けて合計の厚みとします。

なぜ30mL(30cm³)が重要なのか?

脳内出血の治療において「30mL」という数値は一つの大きな境界線です。臨床研究において、以下の傾向が示されています:

血腫体積 予後との相関 臨床的解釈
30mL 未満 比較的良好な予後 保存的加療(血圧管理、安静)が選択されることが多い。
30mL 以上 死亡率の上昇(約3倍) ICHスコアの予後不良因子(1点)となり、手術的血腫除去の検討対象となる。
60mL 以上 極めて予後不良 テント上出血の場合、脳ヘルニアの危険性が非常に高く、救命自体が困難になることがある。

手法の限界と注意点

ABC/2法は非常に便利ですが、以下のようなケースでは実際の体積よりも誤差(過大評価または過小評価)が生じやすいことが知られています。

  • 複雑な形状: 血腫が星型や不規則な形状、あるいは複数の血腫が孤立している場合。
  • 血腫周囲の浮腫: CT値が低い脳浮腫領域を血腫に含めてしまうと、過大に算出されます。
  • ワーファリン等の服用: 凝固能異常がある場合、時間経過とともに「血腫拡大」が起こるため、初回CTでの計算値が数時間後には無意味になることがあります。

よくある質問(FAQ)

Q:mL(ミリリットル)とcm³(立方センチメートル)は同じですか?

A:はい、医学・物理学的には同じ体積を表します。血腫量には通常mLが使われます。

Q:ABC/3法というのも聞いたことがありますが…?

A:血腫の形がよりいびつな場合や、端が尖っている場合に/3で割る調整法を提案する文献もありますが、標準的なICHスコアなどではABC/2法が採用されています。

Q:脳室内出血(IVH)がある場合、その分も数えますか?

A:ABC/2法はあくまで「脳内血腫の実質部分」を対象としています。脳室内への穿破がある場合は、別途「IVHスコア」などで評価するのが一般的です。