ICH Score (脳出血予後予測スコア)

5つの臨床指標から脳出血発症後30日の死亡率を予測します。

評価結果

ICHスコア(Intracerebral Hemorrhage Score)とは

ICHスコアは、脳出血(脳内出血)を発症した直後の患者の状態から、その後30日以内の死亡率を予測するために開発された臨床評価スケールです。2001年にカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHemphillらによって発表され、現在では世界中の脳神経外科や救急医療の現場で、重症度評価や患者家族への説明ツールとして広く利用されています。

このスコアは、CT画像所見と身体所見から得られる5つの独立した予後因子を組み合わせて算出されます。スコアが高いほど予後が不良であることを示し、治療方針の決定における重要な参考指標となります。

判定項目の詳細と配点

評価項目 基準 / 分類 配点
GCS (Glasgow Coma Scale) 13 - 15 0点
5 - 12 1点
3 - 4 2点
年齢 (Age) 80歳未満 0点
80歳以上 1点
出血部位 (Location) テント上 (Supratentorial) 0点
テント下 (Infratentorial) 1点
出血量 (ICH Volume) 30 cm³ 未満 0点
30 cm³ 以上 1点
脳室内出血 (IVH) なし (Absent) 0点
あり (Present) 1点

ICHスコアによる30日死亡率の予測

合計スコア(0点〜6点)に応じた、統計的な30日死亡率は以下の通りです:

  • 0点: 0%(ほぼ全員が生存)
  • 1点: 13%
  • 2点: 26%
  • 3点: 72%
  • 4点: 97%
  • 5点: 100%
  • 6点: 100%(極めて致死的)

※上記の数値はあくまで統計的な予測であり、個々の症例における治療効果や合併症、基礎疾患の状態によって実際の経過は異なります。

臨床的意義と注意点

ICHスコアは簡便かつ迅速に測定できるため、救急搬入直後のトリアージに有効です。しかし、以下の点に注意する必要があります。

  • 初期判定のみに依存しない: スコアは入院時の状態で計算されますが、脳出血は発症から数時間は血腫が拡大するリスクがあり、再評価が必要な場合があります。
  • 積極的治療の限界を定めるものではない: 高スコアだからといって必ずしも治療を断念すべきという意味ではなく、あくまで統計的な重症度を示すものです。
  • リハビリテーションの可能性: スコアは「生存率」を主眼に置いており、生存した場合の「機能的回復(まひの程度など)」を完全に予測するものではありません。

よくある質問 (FAQ)

Q:出血量はどのように計算しますか?

A:一般的にCT画像を用いた「ABC/2法」が使われます。最大径(A)、それに直交する最大径(B)、スライス厚とスライス数から求めた厚み(C)を掛け合わせ、2で割る手法です。

Q:「テント下」とはどこのことですか?

A:小脳や脳幹を指します。これらの部位は脳の呼吸や心拍を司る中枢に近く、スペースも狭いため、少量の出血でも生命に関わる危険性が高いとされます。

Q:IVH(脳室内出血)があるとなぜ予後が悪くなるのですか?

A:髄液の循環が妨げられ、脳圧が急激に上昇する(水頭症)リスクが高まるためです。