自由空間伝搬損失計算機 (FSPL)

見えない電波の旅路を計算する。Wi-Fiから宇宙通信まで。

Wi-Fi: 2.4GHz / 5GHz
利得を含める場合、結果は「損失」ではなく「受信レベルの補正値(リンクバジェットの一部)」になりますが、ここでは純粋なパスロスから利得を引いた値(正味のシステム損失)として計算します。

計算結果

執筆者:Kaori Suzuki (Gojikara テクニカルライター)

「リビングのWi-Fiが、なぜか寝室だと繋がらない」。その原因の一つは、電波が空間を飛んでいる間に弱くなる「伝搬損失」にあります。壁などの障害物がなくても、電波は距離の二乗に比例して弱くなります。これを「自由空間伝搬損失(FSPL)」と呼びます。

本記事では、無線エンジニアが設計時に必ず計算するこのFSPLについて、難しい数式を使わずにその概念を解説します。

1. なぜ電波は弱くなるのか?

電球の光をイメージしてください。電球のすぐ近くは明るいですが、離れると暗くなりますね。これは光が消滅しているわけではなく、光が広がる面積が広くなってしまい「密度」が薄くなるからです。

電波もボールのように飛んでいくのではなく、風船が膨らむように球面状に広がっていきます(等方性アンテナの場合)。距離が2倍になれば、球の表面積は4倍になります。つまり、単位面積あたりのエネルギー(電力密度)は4分の1に減ってしまうのです。これが損失の正体です。

2. 周波数が高いほど飛びにくい?

FSPLの計算式には「周波数」の項目があります。

FSPL (dB) = 20log(距離) + 20log(周波数) + 定数

この式から分かるように、周波数が高くなれば高くなるほど、損失も大きくなります。
これが、Wi-Fiの「2.4GHz帯」よりも「5GHz帯」の方が遠くまで届きにくい理由であり、携帯電話の「プラチナバンド(700-900MHz帯)」が繋がりやすい理由でもあります。

3. 6dBの法則

RFエンジニアには常識の「6dBルール」があります。
「距離が2倍になると、損失は6dB増える」
逆に言えば、電力を4倍(6dBアップ)にすれば、飛距離を2倍に伸ばせるということです。この感覚を持っておくと、Wi-Fi中継機の設置場所などを考える際に役立ちます。

4. 壁の向こう側はもっと厳しい

この計算機が出す数値は「自由空間(宇宙空間のように何もない場所)」での値です。実際には、空気中の水分による吸収、地面反射、そして建物の壁による減衰が加わります。コンクリートの壁一枚で、さらに10dB〜20dB減衰することもあります。

Gojikaraは、見えない電波の世界を可視化します。