CAM-ICU (ICUせん妄評価) 計算機

集中治療室(ICU)特有の環境下で、会話が困難な患者さんのせん妄を迅速に判定します。

評価結果

CAM-ICU:集中治療室におけるせん妄管理のグローバルスタンダード

ICU(集中治療室)は、救命のために最先端の医療が行われる場所ですが、同時に患者さんにとっては「昼夜の区別がつかない」「常にアラーム音が鳴り響く」「人工呼吸器で声が出せない」といった、極めて過酷な環境です。このような状況下で、ICU患者の最大80%が発症すると言われているのが**「ICUせん妄」**です。

ICUせん妄は、単に一時的な混乱に留まらず、死亡率の上昇や入院期間の延長、退院後の認知機能低下(PICS:集中治療後症候群)に直結する重大な合併症です。これを早期発見するための唯一無二のツールが、**CAM-ICU (Confusion Assessment Method for the ICU)** です。

1. CAM-ICUが必要な理由:普通のせん妄評価との違い

一般的なせん妄評価法(CAMなど)は、患者さんとの「会話」を前提としています。しかし、ICUでは人工呼吸器を装着していたり、鎮静薬の影響で意識が朦朧としていたりするため、言葉によるコミュニケーションが成立しません。CAM-ICUは、**「はい/いいえ」の首振りや、手を握る動作**だけで評価ができるよう設計されているのが最大の特徴です。

2. 4つの評価ステップの詳細

  1. 特徴 1:急性発症または症状の変動

    患者さんの精神状態が、入院前と比べて急激に変化していないか、あるいは過去24時間で変動(RASSスコアの変化など)していないかを確認します。

  2. 特徴 2:注意力の障害 (ASEテスト)

    「ア・イ・ウ・エ・オ・カ・ア・キ・ク・ア」といった10個の文字を読み上げ、「ア」の時だけ手を握ってもらいます。誤答(アで握らない、またはア以外で握る)が3回以上あれば「注意力の障害あり」とみなします。

  3. 特徴 3:意識レベルの変化 (RASS)

    「清明かつ落ち着いている(RASSスコア 0)」以外の状態(過活動や鎮静状態)であれば、この項目は「あり」となります。

  4. 特徴 4:思考の無秩序

    「石は水の浮きますか?」「魚は空を飛びますか?」といった、首振り(Yes/No)だけで答えられる簡単な質問を4問行います。

3. RASSスコアとの密接な関係

CAM-ICUを評価する前に、必ず**RASS (Richmond Agitation-Sedation Scale)** を測定する必要があります。RASSが-4(物理的刺激のみに反応)や-5(無反応)の場合、意識が低すぎてせん妄の評価そのものができないため、**「UTA (Unable To Assess)」**として記録します。評価が可能になるまで鎮静を弱める(SAT:自発覚醒トライアル)ことが、PADISガイドラインでも推奨されています。

4. 「ABCDEFバンドル」の一環としての評価

現在、世界のICUではせん妄管理を含む「ABCDEFバンドル」という包括的アプローチが導入されています。

  • A: 鎮痛 (Assess, Prevent, and Manage Pain)
  • B: 自発覚醒・自発呼吸試行 (Both SAT and SBT)
  • C: 鎮静薬の選択 (Choice of Analgesia and Sedation)
  • D: **せん妄の評価・管理 (Delirium: Assess, Prevent, and Manage)** ← ここでCAM-ICUを使用
  • E: 早期離床・運動 (Early Mobility and Exercise)
  • F: 家族参加 (Family Engagement and Empowerment)

5. ICUせん妄の予後:PICS(集中治療後症候群)

せん妄が長く続くほど、退院後に「記憶力が悪い」「仕事が進まない」「うつ状態になる」といった高次脳機能障害(PICS)が残るリスクが高まります。CAM-ICUで毎日モニタリングし、1日でも早くせん妄から離脱させることが、患者さんの人生そのものを守ることに繋がります。

医療従事者の方へ:
この計算機は学習および補助ツールです。実際の臨床判断は、病院のプロトコルに従い、複数のスタッフで確認しながら行ってください。